主人公 遠野貴樹の人生のある時期を切り取る形で展開します。
時間と距離、すれ違い、思い出、そして変化をテーマにした物語です。
タイトルの「秒速5センチメートル」は、桜の花びらが地上に向かって落ちる速度のたとえとして、「人と人との物理的・心理的な距離の変化の遅さ・残酷さ」を象徴してるなと思いました。
映画「秒速5センチメートル」のあの結末はなぜおきたのかレビュー
ラストでは、貴樹と明里が踏切ですれ違い、お互いの存在に気づいているけど、電車通過後に貴樹はその場で待ち後ろを振り返り、明里はもうその場所にいないシーンで終わります。
貴樹はその場で待ち後ろを振り返ったあと、歩き始めていたので、昔の恋と決別して、明里と同じように前を向いて進み始めたと感じました。
このシーンは答えがないので、見る人によっていろいろ意見が分かれるシーンです。
映画「秒速5センチメートル」の感想
映像・作画・演出の評価
緻密で美しい風景描写、光と影の扱い、電車の走行、夕暮れ、線路、雨、雪、桜の舞う風景など、情景そのものに感情を重ねる演出があります。
セリフやドラマ的な動きよりも、“余白”や“間”を重視した演出が特徴で、言葉によらない伝え方が好まれる反面、物足りなさを感じるかも。
音楽も静かに沁みるものが選ばれており、映像との調和が高いです。
ストーリー・構成・テーマ性
人と人の距離、時間の流れ、すれ違い、変化と喪失、後悔と記憶。これらのテーマが淡々と、しかし確かに存在感を持って語られています。
観る者の想像に委ねられたラスト(はっきりした再会描写を避ける手法)によって、切なさや余韻を抱かせる設計になっています。
一方で、「ドラマ性が薄すぎる」「もう少しドラマティックな展開が欲しい」と感じる声も一定数あります。
キャラクター・感情描写への評価
貴樹の心情、選べない自分、葛藤、未練など、弱さや揺らぎを持つキャラクター像として共感される人が多いとおもます。
ただし、モノローグが多用されること、台詞が詩的・感傷的すぎると感じる向きもあります。
感情の内面描写が“沈黙”や“表情”で語られることが多いため、キャラクターの行動が見えづらいかもしれません。
映画「秒速5センチメートル」のあらすじ
物語は、遠野貴樹と篠原明里との出会いから始まります。
小学校の時、転校生として明里がやってくる。貴樹は東京から栃木へ転校してきており、二人は自然と親しくなります。
学校での時間、手紙のやり取り、読書の話などを通して、お互いを特別な存在として意識し始めます。
しかし、明里の家庭の都合で彼女は栃木へ引っ越すことになります。卒業後、二人は離れ離れに。
明里が遠くへ行ってしまうことを知った貴樹は、ある日、雪の降る晩に会いに行くことを決意します。
深夜の電車で明里の住む田舎町へ向かう貴樹。風景、雪道、駅の佇まいなどが情緒的に描かれます。
しかし、雪のため電車は遅延し、また天候の影響で運行停止するなどの困難を挟みながら、ようやく目的地に着いたとき、明里はもう帰宅してしまっており、再会は叶いません。
夜明け前、二人はすれ違ってしまいます。
まとめ
『秒速5センチメートル』は、確かに派手なドラマや大きな起承転結を備えた物語ではありません。
ですが、「青春の淡さ」「すれ違いのもどかしさ」「変わらず残る思い」というテーマを 描写と感覚で伝える手法 が、この作品の核だと思います。
観る人によっては「物足りなさ」や「捉えどころのない余白」が苦しく感じられる一方で、その余白こそが、作品を何度も思い出させ、感情を揺さぶる余地を残しているように思います。